極度の緊張感によって得た高揚感

人が集まりそうな繁華街に一人立ち、髪の毛を切らせてもらえないかモデルハントの日々。いけるやろと高を括っていた僕に待っていた現実はそんなに甘いものではなかった。

 

手持ちの服で最高なオシャレをしてモデルハントに出かける。もちろん身だしなみも最高級に整える。無精髭もしっかりと整えて出来る男風に。歯磨きも3周するくらい入念に。

 

髪の毛もスタイリングして鏡でチェック。google先生に聞いていたカンペをバックに入れていざ出発。

 

昨日までの曇り空と違って今日の空は晴れ渡っている。久しぶりにモデルハントする高揚感と後ずさりしてしまいそうな不安と感情が混ざり合って緊張している僕。気持ちを安定させようとiPhoneで音楽をかける。最近の一押しSMAPを聞いて気持ちを落ち着かせる。心地よいリズムが最高だ。(ちなみにダイナマイト)

 

繁華街には人がたくさんいて、とりあえず一発声をかけてみようと辺りを見渡す。カップルや家族連れ。街には申し分ない人がたくさんいる。狙いを定める僕。

 

遠くからこっちに向かって歩いてくる推定18歳くらいの金髪の女の子二人組。楽しそうに会話しながらこっちに向かって歩いてくる。遠くでは判断できなかったが意外と大人な顔立ち。すごく綺麗だ。

 

よし。声をかけてみようと思い足を踏み出す。しかし、思った以上に足が出ない僕。固まったように動かない僕の足。行こうという気持ちとは裏腹に足が出ない。そうこうしているうちに彼女たちは僕の前を通り過ぎて行ってしまった。

 

まだ間に合うと思って彼女たちの背中を追う僕。しかし、足が出ない。肝心の一歩が出ないのだ。地蔵だ。

 

僕は地蔵になってしまったのだ。

 

落ち込む暇なんてない。こういう時は片っ端から声をかけて自分の気持ちを荒治療するしかない。緊張感がある声かけから会話するまで強制的に自分を極度の緊張状態を作り、無双モードに持っていくのだ。

 

吊り橋効果と一緒で極度の緊張状態になると人のテンションはおかしなことになることが多い。

 

おかしなテンションをコントロールすると極度の緊張状態を脱することができる。それを利用するために自分自ら追い込むのだ。

 

またまた狙いを定めて声かけを試みる。しかし、またもや足が出ない。

 

無視されたらどうしよう。笑われたらどうしよう。英語が通じなかったらどうしよう。いろんな文字が頭の中をぐるぐる回り、その文字たちが僕の頭から離れない。不安と言うどでかいものが僕にのしかかってきた。

 

ここで僕の人見知りな性格が邪魔をする。眠っていた悪魔が目覚めてしまったのだ。固まった足を見て笑ってしまった。所詮こんなもんやろと。所詮粋がっていた口だけの奴やんと。

 

しかしここはイギリスだ。伝統と自尊心を尊重する国。今まで旅をしてきて培ってきたコミュニケーション能力はなんだったんだと自分を奮い立たせる。ここで出さないでいつ出すんだ。

 

固いながら一歩が出た。もうこうなったらやるしかないのだ。ぎこちないながら「Hello」と声をかけた。くすんだブロンドの彼女は反応が良く僕のカンペを見ながら笑顔で対応してくれた。日本人ってのが好印象なのか連絡先を交換して後日連絡することに。

 

心臓が爆発しそうなくくらいドキドキしている。自然とにやけてしまって、この感じがおかしかった。久しぶりの感覚が懐かしかったが、この感じを忘れずにどんどん声掛けしていく。

 

暗くなってきたところで終了。結局20人くらいに声をかけて数人と交渉した。あとはメールで詰めていく作業だ。

 

Sorry」とあしらわれることも多かったが、結局はみんな優しく対応してくれて僕の旅にも興味を持ってくれた人が多かった。楽しかったの一言に尽きる。

 

 

結局は逃げていたのは僕で、飛び込んでしまったら全ては動き出してくれるので、あとは身を任せるだけでいいのかもしれない。

 

しかしながら、あの緊張感はこの旅始まって以来の緊張感だった。

 

 

この緊張感は病みつきになるのか、どうなんだろうか。