第6章 The アメリカ

6章 

 

The アメリカ

 

体が軽い。朝起きて体が自転車旅に順応したのを感じた。体が軽いと思考もはっきりしている。

 

せっせとテントを片付けて歯を磨く。これがいつもの僕のルーティーン。お湯を沸かしながら準備を始める。朝はいつものパスタ。茹でたパスタにオリーブオイルをかける簡単飯。これでエネルギーになるのか想像つかないが、食べないよりは幾分かマシだろう。

 

せっせとペダルを回し今日もスタート。どんどんと建物がなくなっていき、想像していたアメリカンロードが始まった。

 

目の前にはルート66の看板と文字。眼前に広がる広大な大地。地平線の淵まで続く道。地元北海道の道を連想させたが、それよりも途方もなく感じさせる遠さ。想像できないほどの道の長さだろう。自然と笑みがこぼれた。考えただけで何日かかるかわからない長さに、笑わずにはいられないだろう。

 

ただただまっすぐな道。声を出して叫んだ。声を発せずにはいられない状況に自然に声が出たんだろう。弱者が強者に向かう前に発する威嚇に近い行動、そんな行動に僕は出たのかもしれない。アメリカってすげぇ。

 

ハーレーダビットソンに乗ったバイカーたちが何台も通り過ぎていく。バイカーたちの聖地として名高いルート66はバイカーたちが多くそのバイカーたちは、通り過ぎるたびに手を上げてくれたり、クラクション鳴らしたり、声を発してきたりとアクションが多く嬉しかった。

 

ビビリな僕は、後ろからいきなりクラクションで挨拶されるとビビっていたけど、グーポーズでそれに応えた。広大な大地と広がる砂漠と荒野に連なる山々。景色は変わらないがアメリカの広さに力強さを感じた。これがアメリカだ。

 

途中に見つけたコンビニ。ただそこにポツンとあったコンビニでチョコドーナツを買って道を進んだ。進めどもずっと続く道。ただひたすらにペダルを回し続ける僕。

 

夢中になってペダルを回しているとある境地に至る。夢中が超えると、思考が研ぎ澄まされる感覚だ。物事を簡潔化し、自分の中の迷いが簡潔化される。マラソンを走っている時や山に登っているときに起きていた現象が、自転車に乗っていても出てきた、頭が軽い状態。

 

無意識化の状態で考えていたことは、ある人の幸せだ。関わった人間を幸せにできたら最高なことだろうけど、旅には別れがつきもので、それで新たな出会いが生まれる。何が良いかわからないが、頭がすっきりした状態で考えた僕はシンプル。また会いに行こう。笑顔で会いに行こう。それだけだ。

 

向かい風と戦いながら疲れ果てて寝床を探しながらペダルを回す。ちょうど、道の脇にあった橋の下でテントを張ることにした。山々に落ちていく太陽の明かりで手記を書きゆっくりと床についた。今日も疲れたな。